温かい蕎麦屋

今日、ちょうど定年退職をむかえた初老の男がひとり、
エビの天ぷらが一尾のっかった一杯500円のそばを食べている。

「おやじ、今日俺退職するんだ。」
「へぇ・・・。そうかい。」

会話はそれで途切れた。
ほかに特に話題があるわけでもない。

すると突然、男のどんぶりの上にエビの天ぷらがもう一尾乗せられた。

「おやじ、いいのか。」
「なーに、気にすんなって」

男は泣きながらそばをたいらげた。
些細な人の暖かみにふれただけだが涙が止まらなくなった。
そして財布から500円玉を取り出す、

「おやじ、お勘定!」
「はいよー、700円ね!」